2002/06/01
スパイダーマンその青春彷徨
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今、実に多忙なのである。人に遭う仕事が立て続けに生じて、その合間を縫うように執筆を続ける有様だ。まことに不本意だが、人生にはリズムというものがあり、可能な限り、対人関係を避けている私にも回避ができない状況が生まれてくる。 小説が快調に進む時は、それに全力集中するのが私のモットーであり、対人関係を極限まで整理したのはそのためだ。それでもなお避けられないのだから、これは運命的なものであろうと思う。 執筆中の小説にどっぷり漬かっているのが、作家の私にとって最大の仕合せだ。どんな重要な仕事であろうと、断然執筆を優先してしまう。言霊が急かしているのだから、他のメールの返事を書くとかFAXの問い合わせに答えるとか、一切ネグってしまうのは致し方ない。不義理に不義理を重ねることで、私の創作ペースは成立しているのだ。 話変わって、巷では映画の「スパイダーマン」が大人気であるらしい。私はもちろん未見だし、この先も見る気はない。あのグロなスパイダーマンのポスターを見るとうんざりしてしまうのである。初期のテレビアニメには科学知識のないライターが、月面で銃声がとどろいたり、宇宙空間でパラシュートが開くようなとんでもないことを平然とやっていた。子供だまし、と昔からいっているが、あのスパイダーマンというのも明らかにその種のものだからだ。ファンタジーと言葉を曲げるのもおぞましい。それゆえ、この先、スパイダーマンに関しては一切言及しない。 久方ぶりに、今は大家と世評に高い池上遼一さんの新作スパイダーマンを拝ませて戴いた。やっぱり昔の小森ユウとは全然別人である。青春彷徨のさなかにあったひよわな少年、小森ユウの何かに堪えているような、見ているのがつらくなる表情とは違う。当時作家的衰運期にあった私自身のつらさと重なる青春彷徨は、もう遠い過去のものだが、今だって私は手探りで小説を書きつづけているのだから、おなじことか。小説を必死に書きつづけることで救われているのだからなあ。
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