2001/07/18
猛暑の夏、皆さんご自愛ください。平井和正拝
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空恐ろしい日照りの猛暑である。昨年の夏も猛暑であった。春先から持ち越している眼精疲労の涙目に苦しみながら、「メガビタミン・ショック」の恐ろしい仕事に打ち込んだ。なにせ原本の「ポーリング博士のビタミンC健康法」という分厚い本から引用したり抜粋したり、私の何より苦手とする「整理整頓」に立ち向かわねばならなかったからだ。原本に忠実でなければならないので、いい加減だったりテキトーだったりする文章は書けない。一生に一度のご奉公、と覚悟してやっとできた仕事だ。もちろん一夏の本来の原稿執筆は完全ストップ、出銭ばかりの無報酬仕事であった。まあ、いいよね。人間、生涯に一度ぐらいは世間様(あなたがたのことですよ)に奉仕するってのも。 それはともかく、仕事部屋に立てこもったまま、一夏外出しなかったので、覿面に冷房病になった。冷房は体に悪いのである。三年前は気管支の咳が半年以上止まらなかった。体が冷え切っているといくらメガビタミンでも追いつかない。 そこで今年の夏は一日一度、午後十二時から三時までの猛烈に暑い時間帯をわざわざ選んで一時間以上かんかん照りの猛烈な照り返しの厳しい路上を歩くことに決めた。それもアップダウンの道だ。心肺機能を高めるにもちょうどよい。息を切らして帰宅すると猛烈な汗が噴出して、シャワーを浴びた後も三十分は汗が引かない。しかし、汗が出きった後の快適さはまた格別だ。 サッチャンが外出する日は、外で蕎麦を食う。山本周五郎先生は盛り蕎麦一枚を食べかねて、蕎麦屋の客のおっさんに馬鹿にされたそうだが、私はそんなことにはならないで済んでいる。大盛りを注文して七味をたっぷり振り掛け(これは内田勝さんに伝授された蕎麦の食い方だ)つるつると手繰る。蕎麦が美味くないとこんなのは無理だが、私は土地の知り合いに教えられて、美味い蕎麦屋を手に入れたのだ。江ノ電腰越駅から海よりに数分、「川邊」という蕎麦屋さんだ。もし立ち寄ることがあれば、鴨の付け蕎麦がとても美味い。もちろん盛り蕎麦もお勧め。「川邊」のすぐ近くに美味いと言われるイタリアンの店があるが、ここはテイクアウトをしないというニベもない店なので減点20ポイント。試しに食ったペペロンチーノはよかったし、テーブルワインをグラスで貰ったがこれもグー。しかし、テイクアウトなしと言うのはサービス心が欠ける。 なんか、身辺雑記ふうで気が引けますが、画像は江ノ島方面には全然関係なくて、軽井沢で熊野皇大神社(なんて読むんだろう、くまのすめらぎだいじんじゃ、かな?)で発見した奇怪な狛犬の片割れ。「エヴァ」の最後に登場する使徒を思わせる異様な面構えではないか。もう一つの片割れも吉田茂(戦後すぐの宰相ですよ)に似た面構えで、なんともいえぬ異様な気分に誘われた。 あ、完全予約版、章題は順調に捗ってますからご安心を。
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