2001/05/25
やっぱり紙の本が欲しいっ
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五年がかりで書き上げた「月光魔術團」全三十七巻、残すは来月刊行の最終巻を残すのみ。いつになくしんみりする。作家としてこんなに執筆を楽しんだことはまたとない。沢山の登場人物たちはいつまでも俺の心に住み着いたまま残留し、お陰で新作をなかなか書けずに困った。こんなことは作家になって四十年、初めてのことである。 もしこの作品が、電子ブックのパイオニアとしての活動に恵まれなければ、今ごろこのウルフガイ・ドット・コムというサイトは存在しなかったろう。電子出版の神様が助けてくれたのだ。デジガミ様って本当に存在するかもしれないぞ。 「月光魔術團」三十七巻は、紆余曲折はあったものの、とにかく無事に完結する。折りしも出版業界の空前の超不況の大波を受けて、「幻魔大戦DNA」編のペーパーメディアによる出版は中途で打ち切りになった。なんたる悲運、などと俺は一瞬も思わなかった。これは電子出版を本格的軌道に乗せる絶好のチャンスではないか。商売下手の本城は必ずしも上昇気流に載せることはできなかったようだが、電子出版というニュー・メディア自体が世間の注目を集める機運を招いたことは間違いない。俺が収益を独り占めすれば、電子出版で四千万円がとこ稼いだ、ボロ儲けではないか、と嫉妬深い同業者たちは色めき立つであろう。とにかく他の電子出版社でやっている作家たちは俺の収益の足元にも寄りつけないのだから。年間の収入が二、三百万円ぐらいしかなくなってしまった作家たちは、雪崩を打ってルナテックに殺到する、なんてことが起こるかどうかは知らん。しかし、電子出版の未来は洋々としている、とだけは言える。 ところで、中途打ち切りになった「幻魔大戦DNA」編を、完全予約制少数限定出版の豪華版で出版望むという出版社が出現。予約を近々募集開始ということだ。なぜ完全予約制にするかといえば、返本率はすでに数年前から五十パーセントを超え、売れない在庫を抱えることが出版社の死命を制するからだ。要するにこの危機を乗り越えなければ大方の出版社は(大出版社も)倒産必至なのだ。在庫を抱えずに本を出すには、予約制しか手段は残されていない。そんな説明を受けて、俺は好意的な返事を与えた。素晴らしい本づくりを約束してくれれば、俺も協力は惜しまないつもりである。
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