2005/07/01
がんばれ携帯小説たち
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携帯小説、奔流のように、まさにこの日のために用意され蓄積された作品群が放出されていく。やった、というのが私の本音である。まるでこのために用意されたように、「幻魔大戦deep」が間に合った。数千枚の大作が間に合った、というのは偶然ではなかったように感じられる。数百枚の作品とは違うのである。予定を立てて書き進めたとしても、完成までに二、三年の違いは容易に出てきてしまうからだ。 十年以上前、私平井和正は、この日のためにスタートしたのである。初弾は「ボヘミアンガラス・ストリート」で、全九巻、それを半年で書き上げたとき、やれる、と感じた。言霊が遅滞なく下りてくることを知ったからだ。そして、ゴールは真打のような「幻魔大戦deep」、まさしく言霊下ろしは予定されていたものだった、と感じる。 今の私は、言霊から解放されている。老後の体力を使い果たしたからだし、長期休養を貰った気分でいる。 読者の皆さんが、次第に携帯で小説を読む醍醐味に慣れてきたようでもあるし、作家たちの選り抜きのおもしろい小説を「いつでも、どこでも読める……」楽しさを満喫して貰えるこの手段は、ごく自然の当たり前の一般的な風俗になるだろう。 それでこそ、出版界の悪しき風潮に逆らい続け、レジスタンスを続けた私のような異端児が存在した甲斐があるというものだ。在庫切れや言葉狩り、一切ない理想境が長持ちすることを切に祈っております。
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