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平井和正の「近況+」過去ログです。

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 2004/11/21  泣き虫弱虫……


わたしは三国志など漠然と知っているだけで、流行りだから読もうなどとは一切考えないし、今後とも生涯、読まないだろうと思っていた。チャイナという国の出鱈目さは言語道断と考えるし、四千年の歴史と威張っていても大ピラミッドには敵わない。大文明なとど威張っても大ピラミッドの超古代文明には及びもつかないのだ。ところが困ったことに、酒見賢一さんから献本されてしまった。(どういう文脈だ?)酒見さんはチャイナに詳しくないので質問してくれるな、というようなかたであるが、どう考えてもチャイナというひどい国を知らずに「陋巷に在り」などという小説が書けるわけはないのである。
その折りも折り、(どういう意味なんだ?)最新作の「泣き虫弱虫諸葛孔明」という私の泣きどころのような本を頂戴した。いくらチャイナは嫌い、自分の地図にこんな変な国はない、と居直っていても、私の泣きどころの酒見賢一さんから本を頂戴すると、読まずにはいられない。実をいうとこの本は筒井康隆以後、まったく見られない快快デー的ユーモア小説であり、もうハチャメチャとしか評することのできない小説なのだ。なんというか、この怪作というか、支那という国の無茶苦茶さが生み出す物語は、大陸のどまんなかに巨大隕石がぶちあたっても不思議はない、というくらいの猛烈さなのだ。要するに無意味な内戦で人口が半減するような国なのである。苦虫を噛み潰している私もこの本を読むうち百回は笑ってしまった。筒井康隆なきあと(勝手に亡きあとなどといってはいけない)ユーモア小説というよりドタバタ小説というべきなのかもしれないが、やはり世界ひろしといえども酒見賢一さんの奇想小説はここに尽きている。(文章が変なのは、読後、すぐに文章を書いているせいである。)溜め息。
砲台山はついに十二月にずれこんでしまった。あ、砲台山でなく「地球樹の女神」でした。申し訳ないです。


  
 2004/11/03  少年よ野心家たれ


久しぶりにリブリエの話題であります。ひょんなことでリブリエの初期設定資料を見る機会がありました。するとそのリブリエは見開きとして設定されているのです。ソニーは最初、見開き読書専用端末を考えていたのだけれど、eペーパーの生産が間に合わないとか、あるいは見開きにすると価格設定が倍になるとか、そんな理由で片面にしてしまったと思われます。ご覧に入れる画面は、アラタが試作したもので、
LIBRIeの印刷ツールを使って地球樹14をBBeBファイルに変換してみました。
因みに製品版のPDFは印刷不可なのでBBeBファイルに変換はできません。
ということですが、「月光魔術團」の製品版には印刷用のものもあるので、試してみると一興と思われます。
この際、最新作の「幻魔大戦deep」、リリースをLIBRIe版でやってみようかと野心を燃やしています。リブリエを持たない読者の皆さんも、TIMEBOOK TOWNで読めますし、パソコンの場合はイラストがフルカラーです。
ダントツのTIMEBOOK TOWNベストワンで、度肝を抜いてみたいものです。

  
 2004/10/24  お煎餅が好き(ただし好き嫌い激しい)


夏以降、「幻魔大戦deep」を外出もせず一日中書き続けている。こういうのは言霊に見入られた状態だから、人馬一体で猛然と疾駆するしかないのである。だから、サッチャンにも出来るだけそっとしておいてくれるように頼んである。たまには外出したら、などといってくれるな、という意味である。
そんなわけで、近況といえば連日、書き続けております、というしかないわけだ。それでも執筆に疲れて一息入れるときは、お煎餅を食する。お気に入りはこの画像のもち吉である。入念な仕事ぶりがとてもうれしいのだ。ミネラル・ウォーターももち吉のブランド[力水]に変えた。この数年、○○○リーの南○○○スの自然水とかいうのを取り寄せて飲んでいたのだが、皮膚が褐色によれてきたりするし、一気飲みしたときののどごしの味が異様で気に入らない。[力水]に切り換えて以来三カ月、褐色の気持の悪い皮膚の染みが消えた。お肌も生き生きである。相性の問題よりもっと根幹的な問題がありそうだ、と感じている。
誠実でひたむき、というようなもち吉の仕事ぶり、私も見習いたいものである。しかし、このもち吉カレンダーの温かくレトロな日本のイメージ、もはや弱肉強食の日本からは完全に消え失せてしまったのであろうか。


  
 2004/10/11  台風の夜の神頼み


湘南を強力台風が直撃した。荒れ狂う猛風の音の恐ろしさといったらなかった。生まれて初めて、風の音に恐怖を抱いた。折れた樹の枝が大きな窓ガラスに激突してきたら、と考えた瞬間、神様に祈っていた。うわあああ、神様、この恐ろしい風をなんとかしてください、お助けを、と祈った瞬間、風の音が突如として消えた。旦那、本当ですぜ、祈った瞬間、台風がどっかにいっちめえやがったんで。
こんなことは初めての経験である。助けてくれえ、とわめいた瞬間、助かっていたのである。ジョークの好きなひらりん、きっとこれも冗談だろう、と思う人多数。信じる人極少数。一瞬にして去った台風の対価、神様はどのように請求なさるであろうか。しかし、切羽詰まっていたので、どこのどの神様に救助を求めたのか、覚えていないのである。
なにせdeepにかかりっきりで、台風の荒れる最中も嵐を忘れて書き続けていた。これは停電するかもしれん、するとこの今書いている原稿はぱあっと空に帰してしまうかもしれんと思ったとき、その恐ろしい台風の鯨波が突如として巻き起こったのである。
停電はなかった。片瀬山の下の町は停電で真っ暗になり、下水の水がどんどん上がってきたそうである。神の助けとはこのこと。しかし、お礼を申し上げる神様はいったいどこのどの神様だったのでありましょう。うーん、悩む、悩むぞ。


  
 2004/09/21  幻魔大戦のまぼろし


今、私平井和正は幻魔大戦deepにかかりきりである。まさか幻魔大戦に再度チャレンジ、想像すらしなかった。私の裡ではアダルト・ウルフ同様、すでに完結していたせいである。
その数年前から、ある企業が「幻魔大戦」映画を作りたいとプロモートの動きが始まっていた。私はまったく映画に関して関心がなかったのだが(映画企画は時間強奪と決め込んでいるので)、私の信用する人が橋渡ししてくれたため、お義理でミーティングに顔出ししていた。実際問題、湘南に在住する私は東京まで出るのが億劫でならない。往復の時間を含めて六、七時間ほどのロスが出る。デスクにへばりついて仕事をする私にとっては時間強奪としかいいようがないのである。結局、幻魔大戦は箸にも棒にもかからない箱書きを提出され、手厳しく批判したところで閉幕になった。時間強奪者の皆さん、どうか今後は私を見逃してくださるように。
それがきっかけとなって、翌年から幻魔大戦の言霊がぽちぽちと来訪し始めた。それは過去の蓄積である幻魔大戦と大違いの展開を始めたことで、私の興味を惹いた。やや本気になったのは、この夏の初めである。凶悪苛烈と形容したい今夏は、家の外に出る気さえ奪う物凄さで、仕方なく私は仕事に励むことになった。デスクに牡蠣のようにへばりつく時間さえあれば、私は仕事をするのである。
この画像は、小田原近くの山頂にあるホテルの夕景。ひっきりなしに放牧する羊のような千切れ雲の群れが海上を横切っていく。その光景にひたりこんで、幻魔大戦deepのイメージを展開する私だった。この作品はだれも想像のつかない展開をくり拡げる。
例によって、十七歳の主人公が登場すると、急激な進捗を見るのが、私らしいところだ。しかし、その切り口は、過去の作品のどれとも違う。東丈の孤独な内宇宙と作者の私の内宇宙が重なっていくところに、私は驚愕している。年内完成を目処に執筆中である。


  

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