2004/09/21
幻魔大戦のまぼろし
|
今、私平井和正は幻魔大戦deepにかかりきりである。まさか幻魔大戦に再度チャレンジ、想像すらしなかった。私の裡ではアダルト・ウルフ同様、すでに完結していたせいである。 その数年前から、ある企業が「幻魔大戦」映画を作りたいとプロモートの動きが始まっていた。私はまったく映画に関して関心がなかったのだが(映画企画は時間強奪と決め込んでいるので)、私の信用する人が橋渡ししてくれたため、お義理でミーティングに顔出ししていた。実際問題、湘南に在住する私は東京まで出るのが億劫でならない。往復の時間を含めて六、七時間ほどのロスが出る。デスクにへばりついて仕事をする私にとっては時間強奪としかいいようがないのである。結局、幻魔大戦は箸にも棒にもかからない箱書きを提出され、手厳しく批判したところで閉幕になった。時間強奪者の皆さん、どうか今後は私を見逃してくださるように。 それがきっかけとなって、翌年から幻魔大戦の言霊がぽちぽちと来訪し始めた。それは過去の蓄積である幻魔大戦と大違いの展開を始めたことで、私の興味を惹いた。やや本気になったのは、この夏の初めである。凶悪苛烈と形容したい今夏は、家の外に出る気さえ奪う物凄さで、仕方なく私は仕事に励むことになった。デスクに牡蠣のようにへばりつく時間さえあれば、私は仕事をするのである。 この画像は、小田原近くの山頂にあるホテルの夕景。ひっきりなしに放牧する羊のような千切れ雲の群れが海上を横切っていく。その光景にひたりこんで、幻魔大戦deepのイメージを展開する私だった。この作品はだれも想像のつかない展開をくり拡げる。 例によって、十七歳の主人公が登場すると、急激な進捗を見るのが、私らしいところだ。しかし、その切り口は、過去の作品のどれとも違う。東丈の孤独な内宇宙と作者の私の内宇宙が重なっていくところに、私は驚愕している。年内完成を目処に執筆中である。
| |