2004/04/25
風向きが変わった
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人生の節目、そんな瞬間が十年前に訪れた。日本初の商業電子出版を目指した瞬間だった。奔流のように訪れた言霊が、私にその機会を与えてくれた。[ボヘミアンガラス・ストリート]がそれである。半年間で九冊分の原稿を一気に書き上げた。当時の状況は、非商業的作家が自分の本をサイトに置いていたが、課金システムが欠如しているため、数冊売れたり売れなかったりという有り様であったらしい。(律儀に送金してくる読者がそれでも少しはいた) 当時はインターネット時代到来前で、パソコン通信全盛期であった。そのパソ通業者の大手を10社糾合して、[ボヘミアンガラス]を大々的に売りにかかったのが、本城剛史というこのサイトの管理人である。一桁しか売れなかった電子本が突如四桁に急上昇した。 その売れ行きを傍観していた人々が慌てて電子出版社を作ったが、エロ小説(今は官能小説と品よく呼んでいる)を除くと微々たる売れ行きだったそうだ。 電子出版の夢にとり憑かれたわたしは戦略的方針を定め、超大型大長編を続々書き続けることになった。もちろん言霊が協力してくれなければ、私の本来の作品生産量は年間一、二冊に過ぎない。十年間で八十冊の本を書き上げるのに言霊抜きでは絶対に不可能だった、と断言してもいい。 その電子出版の夢が今、この画像に結実している。私の目は未来を透視しっぱなしだから、このモノクロのeペーパーの面に素晴らしいオールカラーのイラストを視ている。 この読書端末は日本で初めて姿を現したモノクロのテレビ受像機と同じだ。その未来を視ることができる人々だけがオールカラーの美しい画面を想像できるだろう。
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