かれこれ二十年来の読者です。かのウルフガイシリーズが、「黄金の少女」「犬神明」をへて、よもやハッピーエンドで完結するとは奇跡としか言い表せません。犬神明十冊の最後に「散々苦労してこれだけか、まあ仕方ないな」と救われていない不満を感じていたのが一気に解消されまして、心晴れ晴れと言った心境です。特にキム・アラーヤの恋が成就する奇跡には嬉しくてたまりませんでした。世の中ストレートな初恋が成立する事なんて少ないですし、キムの恋心をパーミターが受け入れてくれないのも仕方のない事だと思われますが、そんな世知辛い障害を見事に打破して二人を結びつけた奇跡の魔法使い「鷹垣人美」彼女こそは東丈がいう「その人」真の救世主であると確信します。鷹垣人美のすごい所は「決して傷つかない自我」にあると思います。自我を傷つけるというのは自分自身に負の魔法をかけてしまって、簡単にできる事さえもできないと規定してしまう「心の傷」です。誰しも人生の経験で「恥ずかしい行為」「失敗した恐怖」を自覚して自らに魔法をかけてしまい、勇気を失い行動を制約されます。彼女の自我は「わたしってバカでーの一人生徒会長」という柔軟かつ強靭な自己認識、あるいは保護魔法によって完璧に守られています。それはたぶん、上位意識の配慮かと思われますが、見事に表層意識を自縄自縛の罠から守っています。勝手に罪を感じて自分の心を罰してしまう。こんな読者の思いどおりにならない物語のキャラクターをさんざん見せられている我々からすると、鷹垣人美の「全肯定」する行動に喝采をあげないわけにはいきません。はては「幻魔」さえ「恋」(愛ではなく恋!)で救済してしまった。明らかに恐竜は幻魔の象徴ですから、蝮見やチーマーのボス、そしてクロは幻魔の代役です。それを恋の魔法で救ってしまうなんて、かの東丈では不可能な技でしょう(笑)ともかくハッピーエンドで嬉しいです。彼らが幸せになる事は読者にとってこれ以上ない幸福です。嬉しい、とってもとっても嬉しい「月光魔術團37冊」でした。
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